「黒子のバスケ」アニメ10周年プロジェクト スタート記念       黒子テツヤ役小野賢章×火神大我役小野友樹 スペシャル対談

「黒子のバスケ」アニメ10周年プロジェクトスタートを記念して、小野賢章さんと小野友樹さんのスペシャル対談を実施。
取材の前に、アニメ原画展「黒子のバスケ ANIMATION GALLERY ~10年のキセキ~」を観覧して、記憶が鮮やかによみがえったおふたりに、 収録当時の思い出やご自身の演じるキャラクターへの熱い想いをうかがいました。


黒子テツヤ役 小野賢章
火神大我役  小野友樹

 

――今回のアニメ原画展「黒子のバスケ ANIMATION GALLERY 〜10年のキセキ〜」をご覧になってみて、いかがでしたか?

小野友樹(以下、友樹) なかなか生で見られる機会がない原画を、10年目にしてこうして見ることができるというのは貴重で、奇跡のような展示会だなと思いました。生の原画の迫力が本当にすごかったですね。キャラクターたちが描かれていく過程も含めて、アニメーションというのはこうやって作られているのかと改めて感じ、スタッフの皆さんの熱意ある描き込みを1枚1枚楽しめてよかったです。

小野賢章(以下、賢章) 自分が想像していた以上にたくさんの原画が展示されていたので、見応えのある原画展になっているなと思いました。僕は元々原画を見るのがとても好きで、『黒バス』でも原画を使ったグッズとかが好きだったので、見覚えのある原画も色々と展示されていて、すごく楽しかったです。

――TVシリーズと劇場版のそれぞれについて、印象的だったシーンや収録時のことを思い出されたシーンはありますか?

友樹 今回の原画展を見て、改めて思い出したのは「流星のダンク(メテオジャム)」のシーンですね。「流星のダンク(メテオジャム)」って浅めの角度からダンクして、ボールがゴールリングの奥に当たってガコンッと下に落ちていくイメージでしたけど、原画に描かれた軌跡を見ると、リングの奥に当たったあと、手前に1回跳ね返って下に落ちていたんですよ。説明が難しいですけど、リングに2回当たっていたんだと改めてわかりました。そうしたボールの軌跡も含めて、「こうなっていたんだな」と感じられましたね。

――やはり友樹さんにとって「流星のダンク(メテオジャム)」は特別ですか?

友樹 火神のプレイでは一番印象的ですね。あと劇場版では、青峰と一緒にJabberwock(ジャバウォック)のシルバーを打ち破ったシーンの原画もあって、その瞬間のことを思い出しました。ナッシュは“ザ・悪(ワル)”といった感じのキャラクターでしたけど、原画で改めて見ると本当に悪い奴だなと(笑)。元の表情のデザインを崩してまで、その悪い感じを表現しているんだなと改めて知りましたね。

――賢章さんはどんなシーンのことを思い出しましたか?

賢章 10周年ということで改めて振り返ると、今がちょうど10年前にアニメがスタートした時期と同じ季節ということもあって、第1期オープニング曲の「Can Do」が思い出深いですね。あの当時は朝から「Can Do」を聴きながら仕事に向かう……そういう毎日を送っていましたから。オープニングは何回見たのかわからないくらい見返していたし、なんとなくウキウキしていて楽しかったので、希望に満ちた未来を想像していたのかなと(笑)。劇場版だと、やっぱりラストの空港のシーンじゃないですか?

友樹 そうだね〜。

賢章 あのシーンは何回録り直したかわからないし、最後の方では自分でも「あ、これで終わりなんだな」と感じる瞬間があったので、特に印象に残っていますね。キャラクターとしての名シーンは挙げだしたら本当にキリがないので、やっぱり収録の時のことを一番に思い出します。

――ちなみに、TVシリーズ最終話の収録の時はどんな様子でしたか?

賢章 TVシリーズの最終話も同じように印象深いというか、忘れられないですね。あんなに「最終回」ということを意識した現場は、他にはないくらいでした。「これでやりきった」とか「ゴールした」という雰囲気でいっぱいだったと思います。

友樹 音響監督の三間(雅文)さんが、テストが終わったあとに「何も言うことありません。やりましょう」という感じで、そのまま録っていったんですよね。その時の僕は必死だったので「そうなんだ」くらいにしか感じなかったんですけど、あとから振り返ると、声優としてアフレコに参加していても滅多に経験できない、全員に何かが伝わったような特別な瞬間だったと思います。それは必然なのか奇跡なのか、年月と絆が成せる技だなと感じました。あと、最終話直前くらいに三間さんが言ってくださった「やっと火神になりたかった奴が火神になれたな」という言葉は、今も心に残っていますね。

――今回の原画展では会場用ナレーションも担当されていますがが、久しぶりのお二人での『黒子のバスケ』収録はいかがでしたか?

賢章 1試合1試合を振り返っていく感じの会話…というか解説だったので、当時の「こういう試合だったな」というのを思い出しながら収録しましたね。現場の雰囲気は、すごくよかったですよ。「やっぱり『黒バス』は楽しいなぁ」と思いながらやりましたし、ディレクションしている三間さんも楽しそうでした(笑)。

友樹 どの時点での火神として喋ればいいのか、考えだすと難しくなってしまうので、その辺りは三間さんに「ワクワクしている火神」を引き出していただき、自分はまだまだだなと思いました。ストーリーの中では火神になれたけど、今回のナレーションのようなエンターテイメント重視の火神だと迷ってしまうので、むしろ僕はまだ火神に近づける余地があるんだなと。そうした感覚を三間さんが伝えてくれたので、やっぱりこの人の下でもっと『黒バス』をやりたいなって思いましたね。

――『黒子のバスケ』では、お二人が携わるコンテンツは様々ありましたが、アニメ本編以外ではどんなことが印象に残っていますか?

賢章 自分にとって、色々と初めての経験をさせてもらったのが『黒バス』でした。キャラクターソングもそうですし、アニメイベントで海外(台湾)へ行くというのも『黒バス』が初めてでした。今では作品絡みの歌を歌うことは、当たり前ではないものの割と普通のことになっていますけど、当時は本当に「キャラクターとして歌を歌うって、どういうことなんだろう?」って、思っていましたから(笑)。台湾でのイベントもすごく思い出に残っています。自分の20代の前半から後半にかけて、色々と視野が広がっていくきっかけを与えてくれたのは『黒バス』だったと思いますね。

友樹 僕も賢章と同じで、色んなことを『黒バス』を通して経験させてもらったなと思います。ラジオ(『黒子のバスケ放送委員会』=通称:黒ラジ)とかもそうですね。

賢章 ラジオも一緒にやりましたね。当時『黒ラジ』を担当していたディレクターとは、今も一緒に番組をやらせてもらっているので、そういうことも『黒バス』から始まっているんだなと感じます。

友樹 あとは私事で恐縮ですが、キャラクターソングを出させてもらった時点ですでに舞い上がっていましたけど、谷山紀章さんと同じステージ(KUROBAS CUP 2015)で一緒に歌わせていただけたことですね。ありがとうございます! 僕にとっては、やってみたかったことや予想もしなかったこと、それらすべてを叶えてくれたのが『黒バス』でした。さらに、先ほど話したように三間さんに芝居まで鍛えていただけて、まさに『黒バス』なくしては今の自分はない。そう思えるくらい、すべてを『黒バス』と共に経験させてもらいました。また、賢章自身も初めてのことを僕と一緒に経験できたということも含め、この相棒コンビで、黒子が賢章でよかったなと改めて思いますね。

賢章 はい……そうっスね(苦笑)。

友樹 こういう反応も10年変わらないのがいいんですよ(笑)。

――10周年プロジェクトのひとつであるアニバーサリーソングには、賢章さんも「GRANRODEO feat.小野賢章」として参加されていますが、楽曲の印象をお聞かせください。

賢章 「Can Do」に近い、ワクワク感みたいなものを感じましたね。これからまた新たにシリーズが始まるというわけではないんですけど、まだ何かあるんじゃないかと期待させるような…、『黒バス』は全然色褪せていないなと思わせてもらえる曲でした。レコーディングはすごくスムーズに進んで、「いいじゃん、オッケー」って、いつもの感じでe-ZUKAさんに言ってもらいましたね。

友樹 (笑)

賢章 あと、この10周年っていうタイミングで、また「Can Do」っぽい曲になっているというのも、記念の曲としてマッチしているなと思いました。

――GRANRODEOファンの友樹さんとしても楽しみな曲ではないかと……。

友樹 そうなんです。楽しみにすることしかできないんです! 聞いたところによると、GRANRODEOさんがラジオで僕のことを心配するトークをしてくださったらしく…。でも僕は皆さんが思う以上に“RODEOBOY”なので、アニバーサリーソングのお知らせをTwitterで見た時、普通に「やったー!」っていう気持ちでそれをリツイートしたんですよ。だから「コラボに参加できなくてショックを受けているかも」と心配していただいて、すごく申し訳ないなと(笑)。もちろん、またいつかご一緒できる機会があれば嬉しいですけれど、今回の「feat.小野賢章」に関してはただただ楽しみにしている、そんなメンタルです!

――では賢章さんにとって、長くつき合ってきた「黒子テツヤ」というキャラクターはどういった存在ですか?

賢章 20代を共にしてきた戦友という感じなので、やっぱり黒子から受ける影響みたいなものはありましたね。「あきらめない」とか「仲間を信じる」とか、そういう黒子の姿勢を常に意識しているわけではないですけれど、自然と僕の血肉となっているというか、芯を支えているものの一部になっているのを感じます。そこが黒子を演じて、本当によかったなと思うところです。

――舞台版の『黒子のバスケ』でも黒子を演じたことも大きいのでは?

賢章 そうですね。もう黒子の物語を2周しちゃっているので(笑)。そのくらい常に近くにいたし、特別というよりは何か当たり前に近くにいる存在になっていたかな…という風に感じます。なんとなくですが、黒子の考え方とか大事にしていることは、特に悩まなくてもわかるようになっていると思いますね。

――では、友樹さんにとっての「火神大我」という存在は?

友樹 僕はまだ新人で声だけでは食っていけない時期に、友人から「あなたはそのまま頑張れば、しかるべきタイミングでキャラクターの方から歩み寄ってくれるよ」と言われ、その1年後くらいに火神役が決まったので、僕にとっては頑張ってきた道の途中で出会った存在ですね。でも友達や家族ではなく、不思議な時空にいるんですよ。演じていても憧れているし、すべてを絞りきってもなお届かないパワーを出すのが火神で、ずっと敵わない存在として追いかけている感覚があるので…。そんな火神に引っ張られて、僕も一人では出し切れない自分というものを教えてもらったなと。いまだに最大出力の声を腹から出すと、瞬間的に火神がフラッシュバックするので、声優・小野友樹の丹田(たんでん)に住み着いているのかなと。だから、僕にとって火神は「丹田に住み着いている男」です(笑)。

――アニメ10周年を迎えた『黒子のバスケ』ですが「10年」という節目に、改めて感じることはありますか?

賢章 今やっている別の作品で主人公を演じている役者さんに、この間「『黒バス』を観て声優を目指したんです」って、初めて言われたんですよ(笑)。そんな話題で盛り上がって、すごく「10年」っていう歳月を実感しました。『黒バス』には、そうして作品を観てきた人を今も熱くさせるものがあるというか、バスケに限らず誰もが一度は通る“青春”を感じさせてくれるところがいいなと。何かに夢中になって上を目指して頑張る姿っていうのは、ちょっと青臭かったりもするけど、そういう気恥ずかしさも包み隠さず表現している『黒子のバスケ』を見ていると、「青春っていいなー」って素直に伝わってくるんですよね。いつ見ても「あの頃はよかったな」と気持ちを戻してもらえるような、そんなところも魅力かなと改めて思います。僕の場合は、そこに自分自身の“20代の頃の青春”も重なっているような気がしますね。

友樹 僕は「10年」を振り返ると、最初のジャンプフェスタ(2011年)のステージが甦りますね。僕と賢章と細谷(佳正)くんと野島裕史さんで登壇した、あの光景を思い出します。あと、僕と賢章と細谷くんで、収録が始まる前にウインターカップ(全国高等学校バスケットボール選手権大会)を観に行って、細谷くんが「いつか『黒バス』でコラボしてやろうぜ」と言ってて……賢章、覚えてる?

賢章 覚えてる。言ってましたね(笑)。

友樹 それが数年後に叶ったりして、この10年の間にいくつもの夢が叶ってきたんだなと思います。個人的にも、自分がこの道を目指すきっかけになった谷山さんが火神と義兄弟の氷室辰也を演じ、テーマ曲はGRANRODEOで、キャラソンも一緒に歌い、予想だにしなかったことをたくさん運んでくれた年月が愛おしいなと感じます。本当に「ありがとうございます!」っていう10年でした。あと、10年経っても賢章とこうやって訥々(とつとつ)と喋っている感じとか、変わらないから不思議ですよね(笑)。
今回の原画展のように、10年間の集大成をファンの人たちも楽しめるイベントとして開催できて、僕もすごく嬉しいなと思います。僕の中で火神は、永遠にチャレンジャーとして筋書きのない物語に挑み続けていて、僕もまだまだ声優として道の途中なので、これからも何かの折にこうして『黒バス』を通して皆さんに会えることを楽しみにしています。

 

「黒子のバスケ」アニメ10周年プロジェクトTIP-OFFプロモーションレポートはこちら http://kurobas-info.sakura.ne.jp/news/1767/